みな大き袋を負へり雁渡る 西東三鬼
句集『夜の桃』は昭和二十三年の刊行。してみると句の「大き袋」は買出しの袋であろうか。戦後すぐ日本は飢餓に直面していた。食うことが生きのびるという、単純でしかも深刻な時代である。「大き袋」は人間が背負うべき業、飢餓の時代だけでなく、現代の私たちも目に見えないそれを一つづつ抱えている。現代の「大き袋」はむしろ、昭和二十三年のころの「大き袋」よりずっと重いものかもしれない。
句集『夜の桃』は昭和二十三年の刊行。してみると句の「大き袋」は買出しの袋であろうか。戦後すぐ日本は飢餓に直面していた。食うことが生きのびるという、単純でしかも深刻な時代である。「大き袋」は人間が背負うべき業、飢餓の時代だけでなく、現代の私たちも目に見えないそれを一つづつ抱えている。現代の「大き袋」はむしろ、昭和二十三年のころの「大き袋」よりずっと重いものかもしれない。