季語散策 泉
泉は、山や野に湧き出る清らかな水が池や沼のようになったもの。湧き出る水は冷たく涼気があたりにただよう。この涼気が「泉」という季語の本意。涼しく詠むことが大切である。
わが影を金のふちどる泉かな 野見山朱鳥
暗い泉に映った自分の影を日の光が縁取っている。明るいものと暗いものというコントラストの俳句である。泉の暗さが涼しさであろうか。
刻々と天日くらき泉かな 川端茅舍
こちらは、太陽が時間を追って暗くなるという幻想的な泉である。日蝕の句のような感じもあるが、むしろ作者の心の中の泉、心象の泉とみたほうがよさそうである。
ギヤマンの珠ゆらぎゐる泉かな 長谷川櫂
「ギヤマンの珠」は湧いてくる水のこと、湧水が珠のように揺れている泉。「ギヤマンのごとく」や「ギヤマンのような」を飛び越えた大胆な喩法である。
静かさは砂吹きあぐる泉哉 正岡子規
静かさがとりもなおさず涼しさ、「静かさは」が力強い。
菜洗ひの去りたる泉荒れにけり 飴山實
こちらの泉はちょっと暑苦しい。