感想29
104 譲り合ふ青田の径に万歩計 ユクヒト 2
「青田の径や」と強く切る。
——-
115 留守電の母の声聴く彼岸かな 杉山駄芭 4
「彼岸かな」では理屈、もっといい季語を。
——-
118 のどけしや音軽やかに鋸を引く 柚子 3
「鋸挽いて」と下五を流してみたい。
——-
121 鶯の声に目覚める湖畔宿 松の 1
「湖畔宿」が重い。
鶯の声に目覚めてゐたりけり
簡潔な描写はちょっと怖いのですが、しこを恐れない。
——-
123 松葉杖草に寝かせて蓬摘む みづほ 10
ちょっとわざとらしさがあります。
——-
127 点滴の一滴遅々と花の冷え デラシネ 12
上五中七を生かす季語は?
点滴の一滴遅々と春深し
——-
137 雨音に眠りを誘ふ春の朝 ユクヒト 2
「春の朝」がちょっと当たり前。
雨音が眠り誘ふや春の昼
——-
150 腰伸ばし揚雲雀聞く野良仕事 えいりょ 2
「揚雲雀聞く」の「聞く」がよくない。季語である「揚雲雀」に触れない呼吸。
揚雲雀腰を伸ばして野良仕事
——-
151 ものうげな日永のラジオ株報ず 凡士 1
のどやかに株価報ずるラジオかな
——-
153 ほろほろと山ざくら又山桜 しんい 0
阿波野青畝のあまりにも有名な句の物まね。ちょっと恥ずかしい。
——-
156 春暁や能登は海より目覚めけり 凡士 17
季語が「春暁」ではだめ。あまりにも俳句の空間が狭い。
亀鳴いて能登は海より目覚めけり
畑打てば能登は海より目覚めけり
もっといい季語を探してください。
——-
167 遠足の子ら大仏を出て来たり 百合 5
類想があるのでは?
——-
175 初燕退院の歩の揺るぎなし あつこ 2
「揺るぎなし」では面白くもなんともない。「あたふたと」で俳句になる。
——-
183 退職の花束抱え春夕焼 美登里 2
「春夕焼」では退職の人を描けない。
退職の花束抱へ冷し酒